慰謝料を得る条件と相場
不倫を理由に慰謝料を得る大前提として「配偶者に不貞行為(肉体関係を結ぶ)があったこと」が必要です。
なぜ証拠を用意する必要があるのか、慰謝料の相場等について解説します。
元配偶者からの慰謝料
まず、慰謝料を得るには「結婚」している必要があり、ただの恋人同士では慰謝料請求は原則としてできません。
(例外として「内縁関係」であれば慰謝料請求が可能です。)
さらに、慰謝料を請求する場合は原則として離婚を伴います。
なぜならば婚姻関係を継続する場合、互いが共有する財産から出すことになるため、貰った側の財産が増えることが無いためです。
不倫を許すのであれば、仲直りの条件としてお小遣いやプレゼント、旅行等を個人的に請求してみるとよいでしょう。
DV等があれば上乗せも
慰謝料請求には、主に「暴力」と「不貞行為」の2種類があります。
ただし、夫婦ケンカの際の言葉で傷ついた・配偶者の親から嫌がらせを受けた等の精神的苦痛は原則として慰謝料請求の対象にはならず、肉体的や金銭的なDVが対象です。
暴力については本人の証言のほか、医師からの診断書・暴力を受けた日時を記した記録、日時が分かるものを添えてアザができた写真などを用意しておくとよいでしょう。
暴力であれば、当事者が否定を続ける等で明確な証拠を掴めなくても、裁判所が暴力を振るっていた可能性が高いと判断すれば慰謝料の請求を認めるケースがあります。
不貞行為はサレた側に立証責任
一方で、浮気については裁判所の裁量で不貞行為があったと認めることはありません。
少し難しいのですが、これは不法行為に基づく損害賠償請求は「債権者側に立証責任があるため」です。
つまり、慰謝料の請求者(債権者側)が「〇〇をされて〇〇円の損害を受けたため、その損害を賠償してほしい」という旨を裁判所に訴えなければならないのです。
なお、行為に及んでいる状況の写真やビデオなど入手することは現実的に困難ですので、ホテルへの出入りや居住している家へ出入りしている姿が証拠として認められます。
このほか、愛人との間に隠し子が生まれ、DNA鑑定で配偶者の子供であることが認められた場合も法的証拠になりますが、本人の同意なしに検査ができないという点には注意が必要です。
慰謝料の金額
相手の経済力によっても異なりますが、元配偶者から得られる慰謝料は200~300万円が相場です。
さらに、離婚をする場合は財産分与も発生しますので、経済力が高い相手であれば慰謝料が少なくても多くの金銭が得られる可能性があります。
なお、高収入でも分与可能な財産が少ない場合、裁判所の判断で相場より高い慰謝料を認められるケースもあります。
ただし、判例では高くて300万円程度が相場になりますので、300万円超えの慰謝料を求めている場合は事前に弁護士へ相談し、上手く示談に持ち込むのが良いでしょう。
不貞行為の成立要件
不倫の慰謝料請求は、正式には不法行為に基づく損害賠償請求といいます。
民法709条に不法行為の要件が記載されておりますので、確認していきましょう。
【民法709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
つまり、以下の要件を満たす必要があります。
1.不倫であることを知っていた又は知ることが出来た
2.法律上保護される権利がある
3.権利の侵害行為が存在している
4.損害が実際に発生している
5.損害が加害者の行為により発生している(因果関係)
6.違法性阻却事由がないこと
まず、「不倫関係であることを知っていたか」という点ですが、例えば不倫相手が会社の同僚や同級生等であれば知っているのが自然ですのでクリアとなります。
「法律上保護される権利」は婚姻のことを指し、それが侵害されているという意味になりますので、浮気の証拠を掴んだ時点で共にクリアです。
(ただし、婚姻関係がすでに破綻していた場合等については、権利がすでに無かったと認定される可能性がありますのでご注意ください。)
「損害が実際に発生している」「因果関係」については、配偶者と不倫相手が不貞行為に及んでいる事実があれば証明できますので、こちらも証拠を掴めば問題ありません。
「違法性阻却事由」とは考慮すべき事情があるか否か(正当防衛等)ですので、こちらが基本的に考えなくても結構です。
証拠の有無が鍵になる
前述した通り、立証責任を追っているのは慰謝料を請求する側です。
不貞行為が本当にあったのか、権利侵害はどの程度なのか、当事者は不貞行為に当たることを知っていたのか等、証拠を掴まなければ立証することができません。
下手に動いてしまった結果、証拠を抑えられなくなってしまった…
このような事態だけは避けるようにしてください。